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室戸の干物|高知県室戸市|Vol.38

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室戸の干物|高知県室戸市|Vol.38

兄弟が挑む新たな漁師のあり方

East水産

※記事内容は2026年1月発刊時のものです。

室戸の海産物の価値を、きちんと伝えたい

高知県の東端、太平洋に突き出した室戸岬。室戸市は、黒潮が流れる太平洋と切り立った海岸線に囲まれた、全国でも有数の漁業の街です。キンメダイやキハダマグロのほかに伊勢海老やメダイ、ウツボなど、多種多様で魅力的な海の幸が水揚げされています。 

しかし、その価値が十分に伝わっているとは言えません。他地域と比べて半額ほどで取引されることもあります。例えば、伊勢海老は、相場が1キロ7,000円であるのに対し、室戸では、3,800~4,000円ほど。品質に見合った価格がつかず、漁師の収入につながりにくいという課題が生じています。加えて、漁獲量の減少や若者の流出による後継者不足など、室戸の漁業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。 

こうした状況の中で、「室戸の海産物の本当の価値を、きちんと伝えたい」と挑戦を続けているのが、室戸市に拠点を置く株式会社East水産です。

今回の取材では、同社がどのように商品づくりや販売を行い、地域の課題と向き合っているのかを伺いました。 

水産業への一歩

East水産は、兄弟で経営されています。兄の野町拡台さんは現場担当として、漁や飲食を中心に動き、弟の拓史さんはお店の経営など漁以外の部分を担当しています。  お二人は、2020年に室戸市内でバー“East”を経営していました。そのバーは、地元の漁師さんの集まる場所となっており、お二人は室戸の魚や海の話をたくさん耳にしました。地元の漁師さんのお話を聞く中で、「室戸には、まだ知られていない魚がたくさんある」と認識を強く持ったそうです。 この現実への問題意識が、水産業へ足を踏み出すきっかけとなりました。

未経験からの挑戦

兄の拡台さんは、漁業経験ゼロの状態から漁船を購入し、実際に漁に出るという大きな挑戦に踏み出しました。 
「新しいことをやることに、あまり抵抗がないタイプでした」と語る兄の拡台さん。漁のノウハウがないところから漁業を学び、漁師としての挑戦を支えたのは、地元との深いつながりでした。お二人は「友達や先輩が先生だった」と語ります。その地域とのつながりが、未経験からの漁師への挑戦を後押ししたのです。 

一気通貫の仕組み

現在は、漁業・加工・販売の3つを“一気通貫”で行っています。 

室戸には、豊富なミネラルを含む海洋深層水の影響を受けた、美味しい魚が数多く獲れますが、その価値に比べて、まだ十分にブランド化されていない魚種が多く存在しています。そのため、これから開拓できる余地は大きいと感じているそうです。 

獲った魚を加工することで価値を引き出し、価格にも見合った評価を得られるようにする。そんな考えのもとお二人は、獲るだけではなく加工まで自分たちで行い、加工品を販売することで室戸の魚を適正価格で取引できるようにしたいと考えています。 室戸のメダイやウツボ、伊勢海老などの付加価値をどのように高めていけるかに日々向き合い、商品開発を行っています。 

商品づくりのこだわり

商品づくりで大切にしているのは“商品のインパクト”です。珍しい加工方法や工夫をしながら、他の商品と被らないような商品開発に取り組んでいます。 

例えば、ふるさと納税で出品している伊勢海老は生きた状態で発送され、購入者の自宅に届いて箱を開けた瞬間に、新鮮なエビがゴソゴソと動く感動とインパクトを届けています。そのために購入者との到着の日時の確認など、発送までの準備は入念に行います。 

「固定観念がないからこそ、何でもできるような気がする」と語る拡台さん。  型にとらわれず新しい挑戦を続けています。

ふるさと納税

室戸の魚の魅力を、地域外にも発信するため、お二人は、ふるさと納税にも力を入れています。ふるさと納税での販売は、市外、県外の人にも室戸の海産物の魅力を知ってもらうきっかけになっています。 東京や大阪からの注文が多く、ふるさと納税で商品を購入した方が「直接食べてみたい!」と広島から来店したこともあったそうです。ふるさと納税は、単なる販路拡大にとどまらず、購入者が実際に室戸を訪れるきっかけにもなっています。 

若い力が残る街

室戸は高齢化や人口減少が進む地域ですが、拡台さんを含め、20代の漁師も20人ほどいるそうです。 

お二人は、「新しいことに挑戦したい」「室戸が好きだから室戸の魅力を自分たちの力で発信していきたい」そんな真っ直ぐな想いを、取材の間、一貫して語ってくださいました。  「このままだとどんどん室戸の漁師たちの高齢化が進むので、若い人が漁師になりたいと思えるような街になってほしい」漁師という仕事に夢を持てる街へ。お二人の挑戦は、すでにその一歩を踏み出しています。

 

取材を終えて

室戸の水産業の現状や、地方が抱える課題に直面してもなお、お二人の「室戸には、チャンスしかない」と話す姿が印象に残りました。けれど、取材を重ねる中で、その言葉が決して勢いや理想論ではなく、現場での試行錯誤を積み重ねた先にある言葉なのだと気づきました。うまくいかないことも多い中で、それでも新しい挑戦を続けている、その姿に感動しました。 

室戸の水産業には、まだまだ課題があります。それでも、室戸の水産資源の可能性を信じ、伝え方を工夫し、少しずつ人の流れを生み出していく。そんな積み重ねの中に、室戸の明るい未来があるのだと思います。 

お二人の挑戦が詰まった、室戸の海の恵みを、ぜひ一度味わってみてください。

取材・執筆:高知大学 地域協働学部 コミュニティデザイン研修室 齋藤叡華、泉雅也、原諄多、小川結衣、竹中楓

 

1月号の食べもの

今回お届けする商品は、“ウツボの干物”と“カマスの干物”です。

“ウツボの干物”は室戸産ウツボを独自製法で柔らかく仕上げ、添加物不使用で常温長期保存を可能にした「ウツボの常温干物」は、温めるだけで香ばしい旨味が楽しめます。 カマスは30~50cmの白身魚の一種で、クセの少なさが魅力です。 室戸の海洋深層水で育った、澄んだ旨みの魚を、ご自宅の食卓へ。

えひめ・こうち食べる通信 2026年1月号

East水産

高知県室戸市

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