土佐清水の宗田節
太平洋に面する節納屋で受け継がれる100年の伝統技術。
たけまさ商店
※記事内容は2024年1月発刊時のものです。

伝統と技術の核心

高知県土佐清水市。広大な太平洋を望むそこは東京から最も遠い場所だと言われている。

黄色の外壁がトレードマークのたけまさ商店の節納屋に足を踏み入れると一帯は出汁のいい香りに包まれていた。


宗田節はカツオより一回り小さいマルソウダ(メジカ)を節にしたものだ。「良い宗田節を作るには必ずしも新鮮なマルソウダがいいとは限らない。新鮮すぎると身が弾けてものにならないし、弱っていてももちろんよくない。手の感覚だけでの判断は10年、20年経っても難しくセンスもいる。見分けるのがどの工程においても重要だ」。そう語る三代目、武政喜八さんの目は常に宗田節を見つめていた。
全てに手を抜かない

納屋の中では毎日およそ3tから4tほどのマルソウダが8人の手によって大きさ別に仕分けされていく。圧倒される手際の良さだ。

仕分け後は熱湯に浸け、約1時間煮る。「カツオと違って身を割かないで丸ごと煮るから旨みが閉じ込められる。出汁は唸るほど美味しい」と語るのは、宗田節に魅了されて妻・早苗さんの実家である「たけまさ商店」を継ぐ島谷真矢さん。
その後、一尾一尾手作業で頭と内臓、中骨を落として重ならないように並べ、一週間から10日かけて焙乾して水分を減少させる。さらに天気のいい日に半日ほど日光にあてると漁穫時に比べ約2割の大きさに縮む。




「こだわっている所を聞かれると全部。良いものを作るには手間をかけるしかない」。真矢さんの言葉通り、すべての工程をほぼ手作業で行っている宗田節は伝統と職人技の集大成だ。
バトンを繋ぐために
たけまさ商店では製造以外にも販売、見学体験、食事の提供や商品開発を行っている。




早苗さんは「実家が宗田節を作っている事は土佐清水を離れてから知った。近くにありすぎて宗田節を知らなかったんです。家業を継ごうとは考えていませんでした。でも夫と戻ってきて改めて宗田節は出汁の原点だと思いました。商品を通して沢山の方に宗田節の名前を知ってもらいたいです」と語る。

「宗田節を食べたとき、これは途絶えさせてはいけないと確信しました。自分が継ぐ覚悟を決めた時から迷いはないです」と真矢さん。職人たちの手によって作られた宗田節には伝統の火を絶やさぬよう、日々奮闘し新たな挑戦に取り組む情熱が詰まっていた。

