Ehime Kochi Taberu Tsushin logo
Skip to content

糀(こうじ)|愛媛県伊予市|Vol.41

TOP

糀(こうじ)|愛媛県伊予市|Vol.41

宮岡糀店

※記事内容は2026年7月発刊時のものです。

大正9年創業
時代を越え街なかに香る老舗の糀

郡中地区と呼ばれる、愛媛県伊予市の旧市街地には、今も地域住民の生活に根差した店が軒を連ねる。その古い町並みが残る一角にあるのが、大正9年(1920年)創業の老舗糀店「宮岡糀店」だ。年季の入った外観と、土間のある店内からは紡いできた歴史の長さを感じる。初代は酢の製造販売として創業したが、親族が米を取り扱っていたこともあり糀屋へと転業したのだそう。
以来100年余り、三代にわたってこの地で糀をつくり続けてきた。店舗奥の作業場では、糀のほか塩糀・味噌・甘酒を製造し、店頭で販売している。夏場はひしおやなすの糀漬け、ところてんも人気で、この時期限定の商品を心待ちにしている常連客も多いという。「昔は市内にも糀屋が数軒あったけど、いまはうちだけ」と話してくれたのは、宮岡瑞江さん。店を切り盛りする三代目だ。

変わらぬ手仕事で守ってきた生き物との対話

先代から受け継がれてきた製法は、そのほとんどが手作業。温度管理から混ぜ合わせまで一つひとつ丁寧に、五感を研ぎ澄ませて糀を仕上げていく。宮岡さん曰く「生き物を相手にしているので、目が離せない」そう。
毎朝6時半には店に立ち、前夜に浸漬しておいた米・麦・大豆を蒸して糀室へ。糀菌の管理は非常にデリケートで、納豆菌のような雑菌の混入は厳禁。温度が上がりすぎれば糀が傷み、冷めすぎると糖度が落ちるため、発酵中も季節や天候を見極めながら湿度・温度管理を徹底している。良品の基準は甘酒にした際に糖度が20度以上になることで、毎日の測定は欠かせない。もちろん原材料にもこだわり、米は東温市などの近隣の契約農家から仕入れている。麦は西条市産のはだか麦を使用し、味噌やひしおに使う大豆は北海道からの取り寄せだ。

培ってきた職人としての矜持
技術を次につなぐ

購入客は地元や近隣の人が中心だが、口コミで訪れた人がリピーターになり県外から注文が入ることも。糀の活用法は幅広く、魚の塩こうじ焼きなど定番のもの以外にも、糀を加えて米を炊くと旨みがぐっと増すという。最近は個人で糀調味料をつくる人も増え、糀を買い求めに遠方から来る人も増えているそう。

お客さまのため、糀文化のためにも「続けて残していかないといけない」と瑞江さんはしみじみと語る。現在、宮岡糀店は瑞江さんと義姉・甥・姪で営んでいる。大正から家族で支え合い、脈々と継承してきた技術は何ものにも代えがたい。大変な仕事だからこそ、長く続けるため「みんなが負担にならないように」というのが瑞江さんの想いだ。一方で、いつかこの味と技を受け継いでくれる人が現れたら——そんな職人としての表情も見せる。切な願いを胸に、今日も黙々と糀と向き合う時間が流れている。

共同取材:愛媛大学 社会共創学部 山口信夫研究室  尾賀大輝、鎌田日々輝、熊丸凌大、西川三葉

 

7月号の食べもの

今回お届けする商品は、宮岡糀店の“こうじ商品”です。「合わせ味噌」「甘酒」「ひしお」をセットにしてお届けします。

えひめこうち食べる通信2026年7月号

愛媛県伊予市
宮岡糀店