自然豊かな山間の農園がはぐくむ、人と地域と。
粒ぞろいのブルーベリーとともに届けたい想いに迫る。
森のともだち農園
※記事内容は2024年7月発刊時のものです。

ブルーベリー農家を継ぐ 教科書は地域のつくり手たち
愛媛県今治市玉川町は、のどかな山間部。玉川ダムがあり、水源にも恵まれた地域だ。


今回取材した「森のともだち農園」の森譲寛さんは若き二代目。
さかのぼること約30年前、龍岡地域活性化協議会(※龍岡は玉川町内の地域を指す)で地域の特産品づくりとして母・智子さんをはじめとするメンバーがマコモタケとブルーベリー栽培を開始。その中で「森のともだち農園」を立ち上げ、2008年に法人化した。一方で森さんは、システムエンジニアを目指し大学進学を機に東京で暮らしていたが、2013年に家族の病気を機にUターン。実家の農家を継ぐことに決めた。

「いつかは地元に帰りたいと思っていました。その為、急な方向転換ではありましたが葛藤はありませんでした」と森さんは言う。「特に僕が帰ってきた頃には地域内のブルーベリー農家の高齢化が進んでいて。ブルーベリーの栽培方法は教科書にいくらでも載っているけど、この人たちがここで作ってきたという経験は途絶えてしまう前に早く学ばなければと思っていました」。
自然と人を活かす農園づくり



森さんの園地にあるブルーベリーはブライトウェル、パウダーブルー、ノビリス、ブルーマルの4種類。森のともだち農園のブルーベリーは総じて「媛ベリー」という名前で出荷される。
「この辺りで栽培に適しているのは〝ブライトウェル〞で、水や土が本当によく合っていると感じます」。瑞々しくて甘みのある食味とむちっとした果肉が特徴だ。「不思議なことに、数キロしか離れていない北条地区では他の品種の方が美味しく育ちます。特定の品種がどんな場所でも一定の味で育つわけではありません」と森さん。年間を通しての収穫量は2.5t。これらはなんと全て手摘み。現在収穫を担当しているのは主に従業員で、森さんは収穫したものをサイズ毎に選別している。「パートやアルバイトで来てくれている地域の方が多くて、うちの農園では『いつ来てもいつ帰っても良い』ことにしています。だから小さいお子さんがいるお母さんや、ダブルワーカーの方もいらっしゃるし、それぞれの生活の合間をぬって短時間でも集中して作業してくれるのが一番だなって思っています」。
ブルーベリーが鈴なりに実るように広げていく、繋げていく
森さんが戻ってからは園地の増設、観光農園にキッチンカー、キャンプ場事業といった新たな試みも始まった。「まだまだ観光農園やキッチンカーの収益は微々たるものですが、お客さんの顔を見て実際にリアクションを見るためにも必要だと感じています。自分たちのやっていることを確かめる場になっています」。媛ベリーを知ってもらうべく間口を広げるための活動に余念がない。

「玉川という地域をベースにやっていくことが一番の目標ですね。やっぱり自分のところだけ上手く回れば良いわけではなくて、うちがブルーベリーやマコモタケを作ることで玉川町や龍岡に人が集まるようになったらいいなと思っている」と話す森さん。「自分が歳を重ねるにつれ、母と同じことを言うようになってきました。アプローチ方法は変えつつも根幹はずっと変わっていないのかもしれません」。
ブルーベリーを軸に事業が広がり、人やものを玉川町に繋いでいく、そんな地域の形が垣間見えた。

